当初は4月14日公演のみを観る予定でしたが、ライブを観ている間に自分の中で渦巻いている思いや
現在進行形で創造されるディランの音楽をもっと聴きたい気持ちが強くなり
急遽、4月16日公演のチケットを購入することにしました。

私はDYLANのオリジナルアルバムが好きですが、同じくらい「The Bootleg Series」をよく聴きます。
「The Bootleg Seris」はDYLANの特定の時期やアルバムを題材にして、未発表曲、未発表テイク、ライブ音源を集めたアルバムで、時としてオリジナルアルバムの音源を超えるものも多いと評価されています。
何より同じ曲でもテイクによってアレンジ、歌唱、表現が変わるDYLANの音楽を
より沢山聴きたいという欲求に応えるものになっています。
これまで17作くらい発表されているのではないでしょうか。
16日公演を観ることにしたのは、そういうDYLANの表現活動のあり方によるものと思います。


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16日は日曜日ということで、仕事帰りに急いで会場に向かうことはなく、それなりに余裕を持って到着。
グッズ売り場は一応観て、欲しい商品もありましたが、ひとまず追加購入はせず。
今回の来日公演では入場前にスマートフォン等は「YONDR」というロック付きのポーチに入れることを求められます。チケット購入前の注意事項として発表されていて、ライブにおけるアーティスト側と観客側の行動、マナーのあり方を模索する中で、導入されているものなのでしょう。もし、緊急な連絡の確認を必要とする場合はライブを抜けて一時的にロックの解除依頼することはできるのかもしれません。

17時くらいにDYLANとバンドメンバーがステージに登場して演奏スタート。
(セットリストは一部を除いて同じですので、各曲の感想は「14日公演の感想」から部分的に文を引用します。)

1曲目は「Watching the River Flow」、1971年のシングル曲でベスト盤にも収録される曲ですが、
所謂通好みで、一般的な知名度はそれほどではない曲ではないでしょうか。この頃のディランは音楽シーンに衝撃を与えることは望まず、静かな生活を送りながら、穏やかな作品を作り続けていたらしいです。
ともあれライブ演奏は、やはり凄腕のメンバーとともにアメリカントラディショナルの深みを聴かせてくれて、あのDYLANの肉声が聴こえる場に立ち会っている現実に、当然のごとく気持ちが盛り上がります。
14日の演奏と大きく違いはなかったかもしれませんが、即興性の強い生の歌唱、演奏だけに、
「リアルタイムの自然に奏でられる音楽」をあらためて体験できます。

2曲目は「Most Likely You Go Your Way and I’ll Go Mine」
最高傑作に推されることも多い名盤「Blonde on Blonde」からの1曲で、
軽快なロックナンバーにして、邦題も「我が道を行く」とカッコいいです。
エンターテイメントとしてのロックのライブを観ているというノリになります。

3曲目は最新アルバムから「I Contain Multitudes」、歌ものとして素晴らしく、まるでこの世のものではない世界に繋がっている感覚になるようで、私自身が今回のライブを観ようと決断したきっかけになった1曲でもあります。
ライブの場では、原曲が分からないほどメロディーを変えることが多いDYLANですが、この曲はアルバムバージョンに忠実な歌唱、演奏だったと思います。
最新のDYLANを聴いている気分になります。


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ここから先は私が最新アルバムの内容を掴みきれていないこともあり、駆け足になりますが、「When I Paint My Masterpiece」「 I’ll Be Your Baby Tonight 」「To be Alone With You」この辺りはどれも前述の静かな生活をしていた時期の楽曲で、渋いセレクションという印象です。私も何度か聴いてはいますが、まだまだ十分な理解には至っていない感覚があります。
「When I Paint My Masterpiece」などは本国においては人気曲らしいですが。
16日公演では私の席の近くで外国人の方と思われる観客が歌詞を口ずさんでいました。
この時期の「Nashville Skyline」は個人的に大好きなアルバムです。

「My Own Version of You」は最新アルバムからの曲で、音楽的に不穏さ、ダークな空気を醸し出しますが、そこが魅力的でもあります。インストゥルメンタルで演奏しても良い感じになりそうな1曲。

「Key West」は最新アルバムの中でも出色の出来として注目されており、歌詞も音楽的にも遠くの楽園を目指して悠然と旅をするかのようで、心の安楽に至る感覚になります。といってもDYLANの曲を批評すること自体が難しいので、個人的な感想というところですが。

そして、今回ツアーのセットリストでも比較的に有名な「Gotta Serve Somebody」はこれまでのトラディショナルミュージック的な落ち着いた演奏から打って変わりエレキギター主体のハードロックの演奏に。まるで2010年ツアーの「All Along the Watchtower 」を彷彿とさせるような激しい演奏に興奮します。この曲を収録した「Slow Train Coming」は、他にも音楽的に魅力的な曲が揃っていて人気の高いアルバムです。私も聴いた回数が多く、アルバムの存在感としては「Oh Mercy」辺りと並ぶようなフェイバリットです。


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そしてライブも終盤に差し掛かり、もうすぐこの時間が終わってしまうのかと寂しさが募りますが、セットリストはかつての名曲、ヒット曲を並べるのではなく、最新アルバム中心の内容で、DYLANらしく、ぶれずに我が道を行く姿勢が相変わらずカッコいいです。正直言ってオールキャリアから名曲、ヒット曲を並べてくれると個人的には嬉しいですけど。そして、その組み合わせも数パターンあると何度も足を運ぶ喜びが増します。しかし、アーティストが心から望む方向にこそアートとしての真実味があると思いますし、DYLANが最新アルバム中心のセットリストとしたことに大きな意味を感じます。

バンドの演奏は各人が均等に見せ場を作った印象です。
 14日と16日で共通して印象的な演奏箇所があったものの、即興性が強いことが両日の違いからも明らかでした。

カバー曲については、14日はFrank Sinatra「Melancholy Mood」とGrateful Dead「Brokedown Palace」、16日はJohnny Mercer 「That Old Black Magic」とGrateful Dead「Brokedown Palace」とのこと。
自分にはあまり馴染みの無い曲ですが、Apple Music等でチェックすることにします。

ラストは「every grain of sand」、歌詞も音楽も集大成的な、まるで聖歌のような響きを感じさせる名曲です。一瞬一瞬を聴き逃すことの無いよう、今回公演において自分が特に大事にしたいと思っていた曲、時間でした。

今ツアーの来日公演を二回観て、あらためてDYLANの音楽について新しく感じたこと、再確認できたこと、色々な収穫がありました。ライブの後は更にDYLANのアルバムを繰り返し聴いています。DYLANは81歳という年齢ですが、声量、表現において十分な、そして更に進化していると感じています。
次回の来日公演も楽しみにして、もっとBOB DYLANの音楽を聴いて、理解したいという思いです。

先日「ローリング・サンダー・レヴュー: マーティン・スコセッシが描くボブ・ディラン伝説」をNetflixで観ました。1975年~1976年にBOB DYLANを中心としたミュージシャンらによって行われたライブツアーをテーマとしたドキュメンタリー作品です。
その中で、DYLANはアメリカ大陸を旅するように多くの聴衆、ミュージシャン、詩人、パフォーマー、スタッフとともに、その場で創造するかのように音楽を歌い、演奏します。エンドロールでは数十年に渡るDYLANのライブツアーの膨大な記録(日付と場所)が流れます。今もDYLANをライブツアーに駆り立てる力、スピリットを素直に尊敬しますし、その中から自分が受け取れるものは何だろう、自分にできることは、と考えています。




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