個人的名盤の紹介、第二回はMansunの「Six」について書きます。

リリースは1998年、彼らにとって2作目のアルバムになり、音楽雑誌でもかなり大きく扱われていました。その頃の僕は主に洋楽を聴いていたものの、Mansunの名前は知らず。
ディスクレビュー等の記事や彼らが共感するというManic Street PreachersやDavid Bowie、他アーティストの音楽性から何となく音のイメージを想像していました。

<Six制作時のメンバーと主とする楽器>

Paul Draper  : lead vocalsrhythm guitar
・Dominic Chad : lead guitarbacking vocal
・Stove King : bass
・Andie Rathbone : drumspercussion


当時、学生だった僕の実家ではWOWOWとそのチャンネルを活用したセント・ギガという衛星放送によるデジタルラジオプログラムに加入していました。その放送枠中に話題のアルバム、名盤をアルバム一枚通して放送するという番組があり、そこでMansunのSixが取り上げられたことがありました。
Mansunについて僕は関心があったものの、CDを購入するほどの気持ちには至らなく、それを当時はまだ先進的な録音媒体だったMiniDisc (MD)で録音しました。

内容はインタビュー、記事にあったような「プログレッシブロック」、「RadioheadのOK Computer」的な構築性とエモーショナルで綺麗なメロディーが融合されており、サウンド・演奏・メロディーの総合的な聴き応えと快楽性を満たす出来となっており、すぐに僕にとってのフェイバリットアルバムとなりました。
歌詞は暗くネガティブではありますが、情熱的な音楽面と相まって、ポジティブに逆境に抗う姿勢が感じられます。

正直、前述の環境で録音した音源は音質的にはあまり良くなかった気がします。
何年か経ってから同アルバムをCDで聴きましたが、音質の差を感じた記憶があります。
それでも、僕はこの音源を気に入り何度も繰り返し聴いていました。
作品に対する新鮮な感覚は、ある部分においては音質で左右されないマジックを持っているのかもしれません。

そして当時、WOWOWでレディングフェスティバルだったと思うのですが、ダイジェストを放送して、その中でMansunは1stアルバム「Attack of the Grey Lantern」収録「Wide Open Space」を演奏しましたが、凄く良く聴こえたことを記憶しています。大勢の観客を前に朝焼けか夕焼けの橙色の陽を浴びて彼らが演奏する姿を憶えています。

アルバム「Six」の話に戻ると、冒頭のタイトル曲「Six」はまさに複数の曲が予想外の展開で繋がっているようで、それでいて常にメロディが際立っていて刺激的な感覚を失わない。二曲目の「Negative」はヒット曲的なポテンシャルを持ち、単独で聴いても癖になるメロディで僕のお気に入りでした。

こうして続けて聴いていると、それぞれの曲が完全に独立することはなく、コンセプトアルバムのように繋がっていることが分かります。しかも全ての楽器、全ての音が意味を持ち、適当に音を重ねた部分はなく、全てが流れるように出来ている。

ピアノの伴奏による美しい4曲目「Inverse Midas」、華々しいギターを聴かせる6曲目「Fall Out」等、印象的な楽曲が何曲もあり、曲調を大きく変えつつもアルバム全体が組曲のようになっていて、それでいて創造力をキープし続け、聴く側も集中力を持って臨めば飽きさせる箇所もありません。

そして単独曲としても本作のハイライトとなる「Legacy」と「Being a Girl」。「Legacy」は絶頂に向けてメロディー、歌唱が高まり続けるMansunの代表曲の一つ。思わず聴いているこちらもエア熱唱する気分になります。
「Being a Girl」はラスト曲になりアクロバティックな疾走を見せる、ある意味で「Six」を象徴する人気曲です。

まさに彼らのクリエイティビティが一つの頂点を迎えた本作ですが、制作現場での緊迫感、集中力たるや凄いものだっただろうと想像します。

そうした複雑怪奇な大作、プログレッシブロック等と色々な形容がされた本作ですが、日本でも多くのファンにとってフェイバリットになる傑作となりました。

続く3枚目のアルバム「Little Kix」も「I Can Only Dissapont U」や多くの良質なメロディをもった力作でしたが、一時の勢いに陰りを見せていたかもしれません。
僕もリアルタイムで聴いた時、今一つピンとこない感覚があったように思います。
分析するとダークでシニカルなようでいてエモーショナルに感性の高みへと導く音楽性から暖かさや幸福感を感じさせる音作りに変わったこと、1曲1曲が独立した歌主体の造りに変わったこと、色々な変化があったかもしれません。

ですが、僕はしばらくして、この「Little Kix」がとても気に入りました。
どの曲をとっても素晴らしいメロディーにクオリティの高いアレンジ、充実の出来と思います。結局のところ、リアルタイムの時代の空気において音楽の聴こえ方、社会への浸透度、売り上げ等という観点については非常に微妙で紙一重のところがあると考えさせられます。

それから数年してバンドは解散。しかし、世界中のファンがMansunの新しい作品リリースを熱望し、4thアルバムになる予定の音源や未発表音源等を集めたコンピレーションアルバム「Kleptomania」を2004年に発表。2006年にはベストアルバムもリリースされましたが、解散後にメンバーの数人は音楽業界から離れているようです。

ボーカルのPaul Draperはソロアーティストとして活動。2017年にはソロアルバムを発表、来日公演も盛況だったらしいです。更に2022年に2ndアルバムを発表、2023年にソロ曲と「Six」を再現するツアーを実施。
ソロ作品はApple Music等のサブスクリプションサービスでも聴くことができますし、ツアーのセットリスト等もWebに情報が載っています。

Mansun解散から長い時間が経過して色々と大変な状況もあったと思いますが、ここにきて活動的な情報が続いて入り、今後に大きく期待を感じられます。

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